学校における安全な集団登山
各学校においては、安全な集団登山の実施に努めていただいているところですが、今後とも学校と家庭、地域、消防、警察、山岳連盟等の関係機関との連携を図るとともに、下記の事項に十分留意し、安全な集団登山を実施されるよう配意願います。
1 計画時(準備段階)における留意事項
- (1) 毎年、目的地が決まっていて、コース等については十分熟知していても、必ず事前に現地踏査を行うこと。また、山小屋や登山地の警察署等から情報を収集しておくこと。
<参考> 富山県警察山岳情報
http://police.pref.toyama.jp/cms_cat_police/108020/
- (2) 事前調査は、次の事項について重点をおくこと。
- 参加者の体力・技術及び引率者の人数・能力等からみて適切な日程やコースを計画する。
- 所要時間を確認する。(行動人員が多くなると予想以上に時間を要する)
- 休憩場所、水の補給場所、便所の有無や場所などを確認する。
- 危険箇所(過去における落雷、転滑落、落石等の事故発生箇所の把握等)及びそこでの安全対策を確認する。(引率者の配置、固定ロープの設定等)
- エスケープルートを確認する。(ルートの有無、状況、所要時間等)
- 地図やコンパスの使い方を確認する。
- 携帯電話や無線機による連絡方法を確認する。また、携帯電話を使用する場合は、通信エリアを確認する。
- (3) 1日の行動は昼食・休憩時間等を含めて、6時間以内を目途として、朝は早めに行動を開始し、夕方は早めに行動を終了するよう計画すること。また、ゆとりをもった日程で実施し、特に高度順化に配慮すること。
- (4) 登山計画の内容については、事前に保護者に通知しておくこと。
- (5) 集合、人員点呼等、集団行動が迅速に行えるよう指導すること。
- (6) 事前に健康診断を実施し、異常のある者は参加させないこと。
- (7) 計画的に長距離走や歩行訓練(できれば荷物を背負い登山靴で)を行うなど、十分なトレーニングを積み体調を整えること。
- (8) 装備について、次の事項に留意すること。
- 携行する装備は使用法に慣れ、熟知しておくとともに、事前に十分に点検する。
- 長袖の上衣、長ズボンを着用する。特に、帽子は必ず着用する。(あご紐もしくは風に飛ばされないように防止措置を講じる)
- 靴底の溝が深く、滑りにくい靴を使用する。
- 雨具は上下セパレート式のものが望ましい。
- 防寒及びケガ防止のため、手袋を携行する。
- 引率者は、必ず救急用品を携行する。
- 引率者は、必要に応じて、ツェルト(簡易テント)、トランシーバー、ラジオ、ピッケル、懐中電灯、ヘッドライト、地図(1/25,000)、コンパス、ロープ(太さ7mm以上、長さ20m以上)等を携行する。
- 通信機器(無線機や携帯電話)の予備バッテリーや予備電池等を携行する。
- (9) 行動食や非常食は、日程、行動内容、嗜好等を考慮し、栄養価が高く消化のよいものを携行すること。その際、軽量化に配慮すること。また、食べ物が傷みやすいので、前日から弁当の準備をしないこと。
- (10) 軽度の負傷者や疲労者をザックやロープ等で搬送する方法を練習しておくこと。
- (11) 集団登山を行う学校は、登山計画届(別紙様式1:部活動用 様式2:学校行事用)を10日前までに、関係機関へ提出すること。
- 公立小・中学校は、登山地の警察署又は県警本部地域課、及び管轄の教育事務所、市町村教育委員会へそれぞれ1部ずつ提出する。
- 県立学校は、県教育委員会スポーツ保健課へ2部提出する。
- 私立学校は、県文書学術課へ2部提出する。
- 事故発生時に備え、名簿(氏名・学年・性別・住所・電話番号・保護者名・血液型等を記載したもの)を学校に1部整備しておく。
2 行動時(実施段階)における留意事項
- (1) 参加者全員にコースの状況(地域・危険地帯など)、行程、注意事項等を周知徹底すること。
- (2) 行動に当たっては、天気予報や山小屋の管理人、案内人等、現地の経験者の意見を十分参考にすること。登山経験豊富な者やガイドが同行して、必要な助言を受けることが望ましい。
- (3) 歩行については、次のことに留意すること。
- 引率者の人数により、先頭・中・最後尾など適切な配置で引率する。また、無線機や携帯電話等を利用し、相互の連携をとれるようにする。
- 体力の劣る者を基準にして、呼吸に合わせ、一定の速度でゆっくり歩く。また、歩行中も常に参加者の体調、気象の変化、滑りやすい箇所、落石、浮石等に注意する。
- 登山道を歩くよう指導する。また、グループごとに区切るなど、列が長すぎないようにし、他の登山者の迷惑とならないよう配慮する。
- 雪渓又は残雪の上を歩く場合は、雪面をカットしたり、固定ロープを張ったりするなど安全に配慮し、絶対に走らない。また、岩場、ガレ場(石が不規則に積み重なった箇所)、草付(草が生えている急斜面)等を通過する際にも同様の処置をとる。
- (4) 休憩については、次のことに留意すること。
- 休憩は荷物、疲労の程度、コースの状況等によって適宜取る。ただし、あまり長い休憩は筋肉が冷えるので注意する。
- 休憩場所は転落、落石等の危険がなく、できれば景観がよく気分転換が図れる場所を選ぶ。
- 休憩ごとに適度な水分補給を行う。(一般的には、体重40kgならば、1時間あたり40kg×5cc=200ccの脱水がある。)
- 行動食(飴など)をとるなど、疲労回復に努める。
- (5) 夏は落雷による事故もあるので、雷雲が近づいて危険を感じたら、速やかに頂上や稜線から離れ、岩かげ、凹地などに身を伏せること。
- (6) 常に参加者全員の健康に留意し、異常者の早期発見に努めること。頭痛など高度障害の徴候が見られる場合は、その場で休ませても回復しないので、速やかに高度を下げること。
- (7) ごみは持ち帰る、用便は所定の場所で行うなどのルールやマナーを守り、植物等の自然保護に気をつけること。
- (8) 事故の発生は統計的にみて2/3は下りのコースで、1日の行動時間のうちでは午後3時頃が最も多く発生していることから、午後3時までには登山行動を終えるような日程で実施すること。
3 緊急時(事故発生時)における手順
- (1) 初期措置
- 事故発生を認知した場合は、直ちに集団行動を中止し、付近の安全な場所に集まり、待機する。
- 引率責任者の指揮のもと、冷静に状況を判断し、事故概要の把握及び事故者の応急処置を行い、自己救助できない場合には速やかに室堂警備派出所や上市警察署へ救助要請を行う。
- <緊急時連絡先>
- 上市警察署室堂警備派出所 (TEL 076-465-5778)
- 上市警察署 (TEL 076-472-0110)
- 立山自然保護センター (TEL 076-465-5213)
- (2) 救助要請要領
- 事故概要の報告
ア 事故発生時刻、事故発生場所、事故原因、事故の程度(具体的に)
イ 事故者氏名、住所、年齢(学年)、連絡先
ウ 事故態様(例えば登山道下山中の転落)
エ 事故者の状況、生死、負傷の程度・その他の参加者の安否、状況
オ 現在行っている救急活動の状況
カ 救助要請内容、人員、装備、食糧、救急用品等
キ 発信者(引率責任者)との今後の連絡方法
- 救助要請方法(いずれかの方法で連絡をとる)
ア 携帯電話で110番又は室堂警備派出所に連絡する。
イ アマチュア無線で室堂警備派出所に連絡する。(夏季における立山周辺であれば、室堂警備派出所が開局しているが、入山時に事前連絡しておいた方がよい。)
ウ 近くの山小屋へ伝令員を出す。(伝令は必ず2人一組で編成すること。)
エ 他の登山者等に連絡を依頼する。
- (3) 事故者以外の参加者の安全誘導
- 初期措置後、現場に必要な担当員を残し、順次、事故者以外の参加者を安全に誘導し、下山する。
4 実施後の評価
- (1) 目的地・コースの設定及び時間配分は適切であったか。
- (2) 危険箇所での安全確保に留意したか。
- (3) 引率体制は万全であったか。
- (4) その他留意することはなかったか。
※ 本通知は、平成23年4月1日以降実施する学校における集団登山に適用する。
(平成23年3月16日 ス保 第1095号 文学 第 154号)
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